〇第21回日本医療マネジメント学会学術総会にて、ランチョンセミナーを共催しました
【共催概要】
第21回日本医療マネジメント学会学術総会(会長=絹川常郎・独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院院長)が2019年7月19、20日の両日、名古屋国際会議場で開催されました。
この中で、メディアスソリューション株式会社により、「共同購買を用いた材料マネジメント〜メッカルGPOで変わる調達〜」をテーマにランチョンセミナーが開催され、メッカルGPOを利用して医療材料コストが削減できた事例を紹介しました。座長を、国際医療福祉大学大学院医療福祉経営管理分野教授の武藤正樹先生に務めていただき、医療法人社団鶴友会鶴田病院院長の鶴田豊先生と名古屋第二赤十字病院経理部購入管理課購入管理係長の藤本幸士氏に、それぞれメッカルGPOのユーザーの立場からご講演いただきました。
当日の会場は立ち見が出るほどの盛況で、参加者みなさんの関心の高さがうかがえました。
【座長の武藤先生よりコメント】
超高齢時代を迎え、医療費が抑制され、医療制度改革、秋の消費増税、人件費の高騰など医療機関の経営が厳しさを増すなか、コスト削減は必須といえます。なかでも医業支出で相当部分を占めるとされるのが医療材料で、コスト削減の切り札として、複数の病院が共同で医療材料などを購入する動きが注目されています。本日は、お二人の先生にその事例を紹介していただき、フロアのみなさんと一緒に討論していきたいと思います。
国際医療福祉大学大学院医療福祉経営管理分野教授
武藤 正樹 先生
【講演1】
医療法人社団鶴友会鶴田病院院長 鶴田豊先生
演題:共同購買システム導入によるコスト削減
~経営のプロでなくともできるやり方はある~
【院長が旗振り役に】
少子高齢化が進み、社会保障費が増えていく中で、診療報酬の抑制、人件費の高騰、働き方改革、さらに10月からの消費増税もあり、医療を取り巻く環境は厳しいものがあります。その中で、社会的役割を果たすために持続可能な病院経営の構築がすべての病院にとって重要課題となります。
そのためには、収入のみならず、支出のマネジメントをしっかりする必要があります。とりわけ、コストマネジメントは、院長などリーダーが旗振り役となり推進していくべきでしょう。
当院は熊本市にある105床の中小病院で、医師10名を含め全職員は240名です。がん予防から緩和ケアまで一貫したがん診療をベースに、がん化学療法や温熱療法、回復期病棟有しながら人工透析(18床、透析患者約60名)を実施しています。
医業収入は17,8億円、医材購入費は約8,000万円/年。医療の質と安全性を担保しながら医材をコントロール(集約化・標準化)し、コスト削減することを目的に、2017年12月より、メッカルGPOを導入しました。
メッカルGPOは①共同購入で安価になった「標準品」と自院の医材の入れ替え、②ベンチマーク(製品別や用途によって全国約2,000病院と自病院の医材購入単価を比較)による価格交渉によってコストを削減することができます。
鶴田 豊 先生
【年間350万円の削減効果】
当院の導入前シミュレーションでは、全医材中10.7%が標準品へ変更可能、約80%の医材がベンチマーク対象だったため、データを交渉材料として活用しました。医材購入費の約40%を占める透析関連医材については特に削減効果を発揮しました。
実際の削減効果は、2018年度では約350万円/年で、ベンチマーク効果が62%(内訳:透析関連85%、内視鏡関連15% ※図参照)、標準品への変更が38%(内訳:手袋31%、CVポート27%、透析関連14%)となっています。
また、副次的な効果としては、ディスポの手袋を8種類使っていたものを2種類に集約し、管理コストが削減できました。2014年以降上昇傾向にあった医材費率も抑制されました。医材変更については、医師や看護師などのこだわりやニーズにより、抵抗感が強いものがあるため、やはり院長などリーダーがある程度旗振り役を務めるとスムーズです。ベンチマーク交渉などは事務担当者が行いましたが、パートナーディーラーとの連携が重要だと思います。
2018年の実際の削減効果/構成比
【パートナーディーラーを加えた検討会を定期的に】
今後の展望としては、院内の医師・看護師・事務・技術者など多職種からなるチームとパートナーディーラーを加えた検討会を定期的に行なっていきたいと考えています。コストの削減効果を可視化し、共有することで現場スタッフのモチベーションが上がります。部門長をはじめ全スタッフにコスト意識を持ってもらい、実際達成したコスト削減効果を共有し、さらなる目標を立てる協働型(PCDSS)のサイクルを回してやっていきたいと考えています。メッカルGPOも標準品が順次増え、加入病院も増加することによってさらに発展しているようで、これからも期待しています。
【講演2】
名古屋第二赤十字病院経理部購入管理課購入管理係長 藤本幸士氏
演題:GPOとベンチマーク分析を活用したデータ対話型医療材料コスト管理
藤本 幸士 氏
【高コスト体質を改善】
当院の医療材料コストは、手術件数の増加などによる医療収入の増加を上回るペースで増えており、今秋には消費増税も控えていることから、そのコスト管理は喫緊の課題と捉えています。
当院は、812床の高度急性期病院であり、おおよそ医師310名、看護師980名、コメディカル260名、事務240名が在籍しています。医薬品を除く診療材料費はここ5年増加傾向にあり、2017年は前年と比べ約3億円増加しました。これまでに外部コンサルタントの利用もありましたが、その都度それなりの効果は得られるものの継続性に乏しく、大々的な体質改善には至りませんでした。そこで2017年にメッカルGPOに加入し、翌年から本格的な活用を開始しました。まず、購買傾向の分析のため、過去5年分に及ぶ購買実績をデータベースに登録し、潜在的な削減可能額や対象診療科などを数値によって明示化していただきました。この分析(主にパレート)とベンチマーク(市場価格)とを相互比較し、これらをもとに取り組むべき項目の優先順位付けをしました。
【最初に組織改革】
院内では最初に組織改革に取り組みました。購買部分に重点を置き、購買管理室を新設。院内多職種の協力を獲得しやすくするために、室長は手術部長とし、さらにコンサルティングチームとして外科と内科の医師、看護部長、ME責任者、会計課長に入ってもらいました。
そして、ベンチマークの定量データをベースに削減インパクトが大きいものから順に抽出し、独自の目標価格設定を行いました。診療部門に対して材料切替の相談を持ちかけると、難色を示されるケースが多く見られるものの、これまでは用いることのなかった可視化された定量データをもとに経済合理性を説明することで、取り組みに対する理解・協力が得られやすい環境となりました。
【削減インパクトは1億2,600万円】
メッカル分析およびGPOを利用した全体の取り組み成果としては、昨年10月から2019年6月までの間に着手したアイテムが259で、削減インパクトは年換算1億2,600万円にも上りました。GPO標準品として新規切替が実現したものが10アイテム。ベンチマークによれば、全体的に全国平均価格よりも安く購入できるようになっていることが確認できました。この間の累積で見ると、交渉の成果として診療材料費のコスト削減額は約6,000万円にも上りました(図)。
最後に、材料費は使用量によって大きく変動します。この部分が相当難しいと感じるところであり課題でもあるのですが、医療材料の使用管理を同時に進めていかないと、病院全体のコストが下がりにくい一因を作ってしまう。これについては院内全体での意識定着が必要です。また、関係する企業と良好な関係を築くことも大事な仕事です。これからも院内一丸となってデータを基にした合理的な医療材料コスト管理を進めていきたいと考えています。
昨年10月から今年6月までのGPOとベンチマーク分析の取り組みによる成果
【ディスカッション時の風景】
会場は満席で立ち見が出るほどで、活発な質疑応答がなされました